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V.S.A. III

平成20年度情報通信月間 & 『ユビキタスでつくる情報社会基盤』

こんにちは、五十嵐智です。5月15日(木)から平成20年度の情報通信月間が始まったようです。

 

  総務省及び情報通信月間推進協議会では、情報通信の普及・振興を図ることを目的に、「平成20年度情報通信月間」を平成20年(2008年)5月15日(木)から6月15日(日)の期間実施します。
  月間期間中は、全国各地で情報通信に関する様々な行事が開催されます。それら行事を通して、豊かに安心して暮らせる社会を築いていく上で大きな役割を果たす情報通信について、国民の皆さまのご理解を求めていきたいと考えています。
  なお、期間中の6月2日(月)に、全国各地で記念式典を開催し、情報通信の発展に貢献された個人・団体に対し、総務大臣、情報通信月間推進協議会会長等から表彰を行います。


1  本年度テーマ

豊かな生活、拡がる信頼、ユビキタスネットワーク

        コンセプト:
       「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」ネットワークに簡単につながるユビキタス社会では、ICTによる豊かさが日常生活の隅々まで浸透し、生活の豊かさの向上や経済の活性化、社会課題の解決等の恩恵につながることが期待されています。このような社会を目指していくことを、本年度のテーマのコンセプトとしています。

コンセプトの中で「期待されて」いると言っているのは、

  • ICTによる豊かさが日常生活の隅々まで浸透
  • 生活の豊かさの向上や経済の活性化
  • 社会課題の解決等の恩恵につながること

の三つということでしょうか。期待しているのは一般大衆?なんとなく主体をぼやかして、漠としてそういう方向に進んでいるような気になりましょう、という風に読んでしまいます。ユビキタス社会を目指そうというのはわかるのですが、本来はユビキタス社会は、より良い社会を目指したらそうなっていたというもので、ユビキタス社会そのものを目指そうというのはなんだかちょっと違うような気がします。

総務省のユビキタス政策と言えばやはり「u-Japan」ですが、最近、私はウォッチしていなかったので、どうなっていのかよくわかりません。u-Japan 政策のページは存在しているようです。

これもまたウォッチしていかなくてはいけませんね。

 

「ユビキタス」の世界から私自身が離れてしまっているので、もう一度ユビキタス社会をおさらいするつもりで、坂村健編著の『ユビキタスでつくる情報社会基盤』という書籍を読んでみました。2年前に出版された本ですので、少し古い部分もありましたが、基本的には今でも通用すると思われる内容でした。

 pp.105-106

障碍というのは読んで字のごとく「バリア」という意味である(本来の「障碍」の「碍」の字は、「碍子」 - 電線から電柱に電気が流れてしまわないように電柱に付いている瀬戸物 - の「碍」で、「害」のようなマイナスイメージはなく単に「妨げるもの」という意味しかない)。つまりは、障碍は自分が今いる環境と体の属性のミスマッチと考えられる。
<略>
障碍という特別な何かがあるのではなく、自分が今いる環境と自分がミスマッチを起こしているのだと考える方がよい。

なるほど、最近、「障害」ではなく「障碍」という字をよく目にするようになったのはそういう意味でしたか。 ミスマッチを解消するものこそが「イネーブルウェア」であるとこの本は説明しています。

 

pp.106

特殊技術を開発するというのではなく、ユーザと環境とのミスマッチを解消するための一般技術をつくると考える。そして、そのコンセプトに私がつけた名前が「イネーブルウェア」である。それは、いまでいうユニバーサルデザインの考え方でもある。

「イネーブルウェア」という言葉が今まで漠としていたのですが、これでようやくなんとなく判った気がします。

 

pp.169

個人情報保護がかつてないほど注目を集めている。個人情報保護法の成立を受けて企業が個人情報の取り扱いに神経質になる一方で、情報漏えいのニュースも数多く報じられている。こうしたなかで、一部には個人情報というのはとにかく利用すること自体が問題だとするような風潮もある。反面、企業が個人情報保護法に過剰反応しているのではないかということも指摘されており、個人情報をめぐる状況はやや混迷しているといってよい。

2006年から今に至っても個人情報保護法をめぐる状況はあまり変わっていません。過剰反応を見据えたガイドラインなども提供されてきつつありますが、私はまだまだ過剰反応の状態から脱し切れていないと思っています。

 

pp.170

たとえばいま話題になっている個人情報漏えいというのは、漏れた情報をよくよくみると住所と氏名とか、たいした情報とは考えられないようなものが結構ある。昔なら「いったい何が問題なのだ?」と思われたような情報であっても、コンピュータが広く利用されるようになると問題になる可能性が出てくるのは確かである。

昔でなくとも、今でも「いったい何が問題なのだ?」と思うことがあります。大したことのない情報漏えいまでが社会的な問題としてニュースで取り上げられる世の中です。もう少し、緩やかな社会的なコンセンサスが得られないものでしょうか。

 

pp.178

日本の住基ネットでも住民票コードを付与しているが、この番号を収集することは住民基本台帳法で原則として禁止されている(住民基本台帳法第三〇条の四三)。本人(住民)が同意している場合であっても、本人確認のために住民票コードを利用することはできないと考えられており、利用目的を限定していることと併せて統一コードの危険をかなり意識した制度になっている。ただし、このような厳格なシステム運用は民間利用の道を閉ざしていることになるため、利用の広がりが期待できないという側面も否定できない。

そうそう、そうなんですよ。住基ネットはせっかく整備されたインフラなのに、それが死んでいるのはもったいない話です。危険性は危険性として理解したうえで、民間利用の道を開くことはできないものなのでしょうか。

 

pp.200

このCMSの分野で、最近フォークソノミー(folksonomy)という言葉が注目されている。folks(民衆)とtaxonomy(分類学)の合成語で、たくさんの人がCMSの中のブログなどで書かれる大量の情報をタグ付けして分類していくことで、総体として確からしいオントロジー辞書のようなものを進化させていくという考え方である。最初から何か辞書があるのではなくて、みんなが何か書いていったものが相互にリンクし合って、そういう関係が結ばれることにより辞書ができていくというものである。

これは、形は違えど、私がやりたいことの一つです。ソーシャル・ブックマークとSNSの融合。暗黙知の見える化、企業としての集合知の具現化といったようなことを進めて見たいと思っています。

 

pp.243

近年、CMS(Content Management System)という考え方が重要になってきている。このCMSとは、いわば実行するとアウトプットとして体系化した知が出てくるようなシステムを指す。人間の社会のなかでこのCMSというシステムを実行すると、知が出てくる - そういうプロセスである。人間社会をコンピュータ・ハードウェアと考えると、CMSはそのプログラムであり、そしてアウトプットがコンテンツ - まさに知というわけだ。

上にも書きましたが、これが私のやりたいこと。ユビキタスなどとはちょっと方向性が違いますが、ずっと考え続けていることです。

 

pp.246

現物なきところに権威なしモノの情報の「権威」とは、まずそれをつくった組織、そしていまそれをもっている人、場所の情報の「権威」とは、管理している組織、そこにいる人、現場を実際に知る専門家にあり、これらには侵しがたい権威があって、インターネットの時代になろうとも権威はゆるがない。しかし、二次情報だけでの生きている存在の権威は危機に面している。

文章の意味が少しわかりにくいですが、要するに「事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きているんだ」ということですね。それと、この私のブログのように二次情報だけで成立しているような存在はもはや不要だと言っているのかもしれません。権威はありませんが、二次情報としてこういう書籍を紹介するということはこれからも生き続けるのではないかと思うのですがどうでしょう。

 

pp.252

もともと軍事研究費という費目がなく、企業が基礎研究を行う余力もなくなってきた日本では、大胆な研究開発がしにくくなってきた。そういう状況だからこそ、逆にいえば、目標をきちんと定めたうえで戦略を立てて必要な研究開発を行わなければならない。たくさんのことをやったなかから成功するものが浮き上がってくるという研究体制は理想ではあっても、もはやできないのである。そこで私が重要だと思うのは、何のための研究なのかをきちんとさせるということだ。

耳が痛い話です。CMSにしてもフォークソノミーにしても、私がやろうとしていることは、情報爆発に対しての集合知としての意味づけ。これです。

 

pp.283

ユビキタスコンピューティングはインフラ型のイノベーションである。そして実現した場合、他の多くのイノベーションも派生する - まさにインフラの中のインフラとなる。しかし、インフラであるがゆえに、社会を構成する多くの組織・枠組み・制度に影響する。

ユビキタスコンピューティングはインフラ中のインフラですか。私はその成果を見守るくらいしか今のところできません。そしてそれが成功して成立する事を前提として、私はその上で動くインフラ上のインフラを作って行きたいと思っています。

 

坂村健 編、『ユビキタスでつくる情報社会基盤』、東京大学出版会、2006年9月

  • 第1章 ユビキタス情報社会基盤とはなにか
  • 第2章 ユビキタス情報社会基盤の実際
  • 第3章 セキュリティとプライバシー
  • 第4章 ユビキタスの哲学
  • 第5章 展望

 

カテゴリ:イベント , 読書レビュー , 雑感

いかちょー (2008-05-19 09:00) | コメント(0)| トラックバック(9)

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