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V.S.A. III

ソフトウェアを作ったら,罪に問われるかもしれない

こんにちわ,五十嵐です.いつも「高木浩光@自宅の日記」を拝見しているのですが,「作成罪」に関する記事の行方は特に最近興味を持っています.


極論すると「ソフトウェアを作ったら罪に問われる可能性がある」という,こわーい話です.立法側としては「運用でそこまではやらないよ」といういつもの論旨らしいのですが,うかつにプログラムを作れないということになりかねません.

Winny の作者である金子氏が著作権法違反幇助の罪に問われている裁判は,多くの人が注目していることでしょう.

便利なものを作ってみたら,思ってもみない方法で悪用された.そういうことで作成者が罪に問われるのかというのが最大の論点だと思います.

FTP というファイル転送の標準プロトコルがありますが,これを実装したファイル転送ソフトウェアはたくさんあります.Winny の裁判の論点とは少し異なるのですが,極端な解釈では,この FTP プログラムの作成者も罪に問われかねないというのが Winny の裁判の注目されているところであり,「作成罪」に対して私が敏感になっている点です.

Winny を悪用した Antinny などのウィルスが蔓延しているために,Winny そのものが悪いと考える風潮があるようですが,Winny そのものは P2P の技術を用いた先進的なソフトウェアであるということは,このブログの読者の皆さんには言うまでもないでしょう.Winny を利用しなければ,Winny を経由した情報漏洩は発生しないというのも事実ですから,Winny の利用そのものをやめるというのも対策としては有効です.

しかし,Winny の利用をやめるということと,Winny そのものが悪いのかどうかということは,区別して考える必要があります.Winny 裁判では,是非とも被告無罪という結末になることを私は願っています.

一方で,ウィルスのような作成時に悪意を持って作られるソフトウェア(マルウェア)についても考えておく必要があります.「悪意」は目に見えませんから,技術力を具現化するために試しに作ってみた(だけで,流布はしない)というものと,流布することを目的に作られたウィルスのようなものを区別することはできません.これをひとくくりにして罪に問おうとするのが「作成罪」なのです.「真意」は目に見えないのだから,出来上がった結果として悪さをするプログラムは,すべて作った者が悪いということです.

高木さんのブログでは,"format c:" という一行プログラムの例が書かれています.自分の便宜のために作ったプログラムが,悪意の元では PC の環境を破壊するものになってしまうという例です.この一行プログラムの作成者を「作成罪」に問うのか否か.貨幣は民間人が作成した時点で罪に問われるが,ソフトウェアも同様に考えるのか.紙幣とソフトウェアはどこがちがうのか.そういう点を非常によくまとめてくださっています.

便利だと思って作ったものが,いつの間にか意図しない方法で悪用されて,作成者が罪に問われる.そんな社会になってしまったら,シェアウェアもフリーウェアもオープンソースソフトウェアも,怖くて世の中に出せなくなるでしょう.OSS にとっては,推進を阻害する要因になるでしょうね.ウィルスを世の中に出すということと,なんとかして区別することはできないものでしょうか.ひとくくりにして「作成罪」にするのは勘弁して欲しいものです.

罪を憎んでソフトウェアを憎まず,ってことにはならんですか.

【追記】
実は私は Winny を利用したことがありません.一度は利用してみたいと思っていたのですが,今となっては Winny を利用するのはやめておいた方が良さそうですね.

 

<コメント by jin> Re: ソフトウェアを作ったら,罪に問われるかもしれない
おっしゃるとおり、世間の議論が変な方向に熱くなっているような気がします。

五十嵐さんのおっしゃる「便利なものを作ってみたら,思ってもみない方法で悪用された.そういうことで作成者が罪に問われるのかというのが最大の論点だと思います.」
という 論点で作成者が罪に問われるのであれば、

良かれと思って作った高性能火薬(ダイナマイト)を争いに使われたノーベルはどうなるんでしょう、そんな偉人はいっぱいいますよね。
 
<コメント by sato> Re: ソフトウェアを作ったら,罪に問われるかもしれない
悪用されるかどうかの話なので違いますが、
その昔 PL 法が SW に適用されたら大変だなぁという話をしたことを思い出します。
PL 法がなくても賠償責任は問われますが。

ま、バグがないプログラムを書けばいいんですけどね。ふ。
 
<コメント by ikarashi> Re: ソフトウェアを作ったら,罪に問われるかもしれない
ソフトウェアの PSE 法なんてのができたりして...
 
<コメント by ikarashi> Re: ソフトウェアを作ったら,罪に問われるかもしれない
そうそう,よく引き合いに出されるのが,ダイナマイトと原子力.
Rinza も気をつけないと,社会インフラという一面から,犯罪温床インフラに悪用されて,罪に問われるかも
 
<コメント by kkato> Re: ソフトウェアを作ったら,罪に問われるかもしれない
いやいやFTPどころか、WindowsやLinuxだって罪に問われるかもしれませんよ。デバイスドライバ作ってるメーカだって危ない。

もう怖いから、ソフトウエア作るのやめて、アルゴリズム考えるだけにしようかな。そうしたら「アルゴリズム作成罪」というのができたりして。
 
<コメント by ikarashi> Re: ソフトウェアを作ったら,罪に問われるかもしれない
アルゴリズム記述言語で書いただけでも,罪になるかもよ.コンパイラなんて,ソフトウェア作成幇助罪だし.

OS は全部作成罪になってしまう世の中.汎用機の独自OSの世界が再来したりして.
 

カテゴリ:情報セキュリティ , 雑感

いかちょー (2006-03-30 15:50) | コメント(0)| トラックバック(2)

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