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ユビキタス社会のプラットフォームを語る 2006

國領二郎 × 保科剛 対談

 昨年に引き続き、慶應義塾大学総合政策学部の國領二郎教授と日本ユニシス(株)の保科剛最高技術責任者が今回のORFの狙いや今後のユビキタス社会の方向性をテーマとして対談を行いました。日経ビジネス11月6日号に「開花期を迎えつつあるユビキタス社会の新プラットフォーム」と題して掲載されました。その掲載内容をご紹介します。

リアルな世界と融合することで
爆発的なイノベーションが起こる

異なるスタンダードが
混在できる仕組みを提案


國領  私は、今回のORFを東京・丸の内で開催することに大きな意義を感じています。ユビキタス社会のプラットフォーム整備が進行し、あらゆるデバイスにコンピューターが導入され、それがネットワークで接続されることによって、物流、金融、医療など、様々なリアルな世界で情報ネットワークの恩恵を反映させる時代に入っています。SFCの産学連携パートナーも、ITベンダーだけでなく、丸の内に集積されているようなリアルなビジネスを展開する企業と協同して、ソリューション開発していきたい。
 今回のORFでは、ビルの中でのイベントに加えて、丸の内の街に繰り出した催しを予定しています。それによって、情報ネットワークが人々のリアルな生活空間と接点を持ちつつあるというメッセージを発信したいと考えています。

保科  インターネットの萌芽期はインターネットそのものに関心が集まる"スモールe"ビジネスが主体でした。これに対し今は、企業が本業にインターネットを活用する"ラージE"ビジネスが活発化しています。同じことがユビキタスの世界でも言えます。丸の内の企業が本業の中で生かすようになることで、ユビキタス社会がいよいよ開花期を迎えることになるでしょう。

國領  今度の試みはデジタルな世界でのイノベーションを既存システムとどうつなぎ連携するかの実験とも言えます。

保科  例えば慶應、東大、日本ユニシスが協同で取り組んでいるのが2006年度の経済産業省「電子タグ実証実験事業」に採択されている、「マルチコード相互運用プロジェクト」です。電子タグで商品を特定するコード体系は、EPC、ucodeなどの複数方式が用いられています。一方式しか識別できないままでは、ユーザーはどれを選択すればいいのか迷い、二の足を踏んでしまいます。このプロジェクトは、複数コード体系が混在していても問題なく稼働できるシステムを構築しようというものです。VTRの規格争いで「ベータ」か「VHS」かの二者択一を迫られたてつは踏みたくないですからね。

國領  今回のORFでは、その実証実験も行います。入場者にEPC、ucodeおよび私たちが独自に開発したコードを加えた3種類の実証カードを配付。どのコードであっても、情報配信にあたって連携運用ができるということを体験してもらう予定です。

保科  今後は家庭の電化製品をネットワーク接続したり、携帯デジタル音楽プレイヤー、携帯電話、携帯ゲーム機、ICカードなど、身につけているものすべてをネットワークで結ぶこともユビキタス社会実現の重要要素になります。異なるアーキテクチャー、スタンダードを気にしないで済むプラットフォームが構築されれば、多様な業種の人々を巻き込んで、爆発的なイノベーションにつながるはずです。

國領  今回のORFのもう1つの目玉は、三菱地所の協力で、会場にユビキタス環境のプロトタイプの家屋を1軒設置し、その中で様々な研究成果を見せる企画です。実は居住空間という明確な題材を示したことによって、学内で画期的な現象が起こりました。多様な分野の研究室が参画し、ユビキタス環境に配慮した家屋の素材、デザイン、その中でこそ可能な在宅介護のあり方など、バラエティーに富んだ研究が展開されるようになったのです。ORF終了後は、この取り組みをさらに発展させたプロジェクトを立ち上げる構想も持っています。

街やキャンパスが
ユビキタスの実験場に


保科  私は今年度上期に國領先生の授業である「ネットワーク情報産業論」に教員として参加しました。実感したのは、キャンパスにインターネットのプラットフォームを完備することによって、インターネットネイティブの学生を輩出し、日本の情報社会をリードしてきたSFCから今後ユビキタスネイティブの学生が生まれ、応用レベルのビジネスモデルが続々と誕生しそうなことです。産学連携の意義は一段と深まりそうですね。

國領  さらに、近隣地域を含めた実証実験も端緒についています。現在、神奈川県には相模川の両岸にツインシティを作る構想が進行しています。20世紀型の開発ではなく、環境や社会制度にも配慮した街づくりを進める構想であり、SFCも全面的に協力するつもりです。例えば、ORFやキャンパスに設置した家屋の実験で得られた知見をツインシティの建築物に生かしたり、看護医療学部の教員・学生が在宅ケアのアイデアを出したりなど、多様な連携が想定されます。

保科  同じ線上で日本ユニシスでも、今年から、医・食・住をテーマにした福岡県飯塚市の「e-ZUKAまちづくりバレー構想」のプロジェクトに参画しています。いよいよユビキタス社会のプラットフォームが稼働フェーズに入りつつあるわけです。ほんの数年前まで、ユビキタス社会で何が実現するのか、仮説しかありませんでした。けれども、医療、介護、物流、品質改善など、応用できる分野の研究が進むにつれて、これは個別の企業や業種のIT化にとどまるものではない。キャンパス、街、さらには社会全体をIT化するという概念が確立されてきました。街という壮大な実験の場を得て、より具体的なイノベーションが沸き上がることが期待されます


「出典:日経ビジネス2006年11月6日号」
http://dev.tyzoh.jp/

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