慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)と日本ユニシスは、ユビキタス社会の実現を目指して産学連携パートナーを形成、プラットフォーム構築など様々な共同研究を展開しています。その実績を背景としつつ、今後はどのような産学連携活動が望まれるのか、そしてユビキタス社会はどんな進化を遂げようとしているのか・・。同大学環境情報学部の國領二郎教授と、日本ユニシスの保科剛最高技術責任者が、それらをテーマとする対談を行い、その模様は『日経ビジネス11月7日号』に掲載されました。誌面化されなかった部分を含めて対談の全内容を3回連載で紹介します。
國領
最近、企業のIT投資がアグレッシブというか、一歩前進した印象がありますね。
保科 國領先生が中心になって進められた「e-Japan計画」が今年最終年度を迎えましたが、この計画を通して、ユビキタス社会のプラットフォームの整備が進み、その上でイノベーションを起こそうという機運が高まってきたからでしょう。
國領 昨年は可能性として語っていたことが、かなり具体的な形で出てきていますね。
保科 RFID(無線周波数識別)や個体識別技術が取り沙汰されるようになったのは2001年頃ですが、当時はまだ技術的な実験の段階でした。それが2003年頃からは徐々にビジネスモデルと組み合わせた実験が進みました。昨年も、各省庁で大がかりな実証実験が行われました。ところが、今年、少し落ち着きをみせた。静かになったということは、いよいよ本物のユビキタス社会到来の時期に入ったことを意味します。RFIDや個体識別技術といった言葉を声高に言わなくなったということ自体がその証明のような感じがします。
國領
確かに、私もいくつかの案件に関わっており、話したいことはたくさんあるのですが、守秘義務があって話せない
状況になっています。すでに技術的な実験期を過ぎ、本格的
なビジネスモデルの立ち上げが間近に迫っていると言えますね。約2年前、私は3年後
の実現をメドとして、
ユビキタス社会のプラットフォームづくりに関するプロジェクトへの参画を呼びかけました。
そのスケジュール通りに進んでいる感触があります。
ただし、
当初はITベ
ンダーの参加がほとんどで、本音としては、もっとユーザー側にも入ってもらいたいという思いがありました。
最近はユーザー側の関心が非常に高くなっており、多様なプロジェクトが動き始めています。
まさに保科さんがおっしゃる通り、大騒ぎした去年より、静かな今年の方が、実質的な手応えを感じています。
保科
ユーザーを含めて様々な方がプロジェクトに参画する中で、個体識別技術やICタグの意味、およびユビキタスがいったいどのような意味を持つのかといったことについて、企業の人たちに明確なメッセージが伝わってきた気がします。つまり、國領先生がe-Japan計画で言われていた仮説-実践-検証のサイクルが回り始めたのでしょう。
國領 興味深かったのは、物流にテクノロジーをどう運用するかというテーマで、ユーザー側から折り畳みコンテナの標準化が問題提起されたことです。情報技術のメリットをビジネスモデルとしてきちんと出すには、その辺りがツボだというのです。つまり、ITの可能性を語るところから、一歩進んで、ビジネスのオペレーション、モデルの中に組み込む方法について、具体的なビジョンと旗ふりが起こるようになってきたわけです。
保科 國領先生がよくおっしゃられるオープンソリューションの社会が、一歩現実に近づいた観がありますね。医療にしても、中小企業支援にしても、複数の企業、あるいはステークホルダーが、共通の場で議論しないと、なかなか進みません。そうしたいくつかの先導モデルを見つけたことが、活発な状況につながっていると思います。様々な立場の方々が一緒になって、プラットフォームの上でイノベーションを起こそうという考え方が徹底されてきたと感じています。
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